花言葉



「いえ、申し訳ないだなんて、とんでもないです。
…じゃあ、吾亦紅ってありますか?」

「はい、吾亦紅ならありますよ!」


愛が嬉しそうに答え、彼を吾亦紅の置いてある場所に連れて行った。


レジには私一人。

愛は、気に入った人を見つけるとロックオンしてひたすらアタックする、
言わばすごく積極的な女の子なのだ。


しばらくすると、愛は吾亦紅を持ってレジへと歩いてきた。
後ろには彼が笑顔でついてきている。


会計は私がやろうと思い、愛から吾亦紅を受け取った。

彼は財布をジーパンのポケットから取り出しながら言った。


「俺あれから花言葉に興味持っちゃって」


彼は私にそう言っている。


「そうなんですか?」

笑顔でそう答えると、彼もまた素晴らしい笑顔を浮かべた。


「はい。だからまた、分からない花言葉とかあったら教えて下さい」

「もちろんです」

「ちなみに、今日調べてきたんですけど、
吾亦紅の花言葉って 変化 なんですよね?」

「…えーっと、はい、確かそうです」

「一つ一つの花にちゃんと花言葉があるのって、すごいですよね」


彼は一瞬、遠い目をしながらそう言った。


会計をすませ、吾亦紅を渡すと彼は背を向けて店を出ようとしたのだが、
愛が彼を追いかけていった。


愛と彼は店の出入り口でしばらく何か話していた。

複雑な気持ちでそれを見つめているうちに話し終えたのか、彼は愛にお辞儀して店を出て行った。


愛は満面の笑みでこちらに戻ってきたので、


「何話してたの?」

と尋ねると、

「名前聞いてきた!」

と誇らしげな表情で答えた。




心の中で、愛グッジョブ!と思いながらも冷静を装って、尋ねた。


「なんて名前だったの?あの人」

「杉本さんだってさ。杉本蓮!カッコいい名前だよね」


愛はほんのり頬を赤くしながら言った。





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