花言葉
「こっちにしよう」
せっかく久しぶりに会えるのだから、思いきり女の子らしい可愛い格好をして純を驚かせたい。
そう思った私は薄いピンク色のふわっとした服を選んだ。
そろそろ、家を出なきゃいけない。
着替えた私は財布や携帯や小物など必要なものをお気に入りのバッグに入れて、玄関へ向かった。
お気に入りの靴を履いて、準備は万端。
ドアノブに手をかけたのだが、ふと純の声が聞きたくなった。
何故かは分からない。
ただ、今から家を出ることを純に報告したいだけだった。
「もしもし、亜実?」
「純!今から家出るよ、待ち合わせは駅前の公園でいいんだよね?」
「うん」
電話口から、笑い声が聞こえた。
「純?どうしたの?なんで笑ってんの?」
「…あ、いや、なんか幸せだな、って。俺ぶっちゃけ単位取ったことよりも、亜実に会えることの方が嬉しいんだよね」
「純…」
「俺も今から家出るよ、じゃあまた後で」
「うん、ばいばい」
通話は終わったが、純の声をもっと聞いていたかった。
何故だろう。
長い間会ってないからなのか。
胸の中に出来た小さなもやもやを打ち消すように頭を振って、深呼吸してから家を出た。