宵闇
乱れた呼吸を整えながら、しっとり汗ばんだ肌を隙間なく合わせる。

その消せない線を隠すかのように、しっかりと。


少し高まっている彼の鼓動が、耳に心地よい。



彼の手が、あたしの背中を、髪を撫でる。


そして、おもむろに、そばにあったケータイに手を伸ばした。



2人の時間の終わりが、すぐそこまで迫ってきていた。



「離れたくない。」


声にならない言葉を飲み込んで、彼にしがみつく。


そんなことしたって、時間は止められないのに。


彼があたしの顔をそちらに向け、優しくキスをする。

額に、まぶたに、頬に、唇に。



彼の、別れの儀式だ。





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