宵闇
それは、突然だった。


彼と倉庫で在庫整理をしていたあの日。


ふいにぶつかった手に、慌ててそれを引っこめると、それを彼が阻んだ。


しっかりと握られた手首に体中の熱が集中した。


驚いて、ふいに彼を見上げたら。


唇が、重なった。



一瞬、何が起きたのかわからなかった。


真っ白になる頭。

見開いた目は、まるで時間が止まったかのように閉じれなかった。



そっと、唇を離すと

『俺のこと、スキ?』

と彼は妖艶にほほ笑んだ。



何が何だかわからないまま、ただゆっくりと頷いたあたし。


それが、今のあたしたちの、ハジマリ。



まさか、こんな苦しい恋になるなんて、あの時のあたしはこれっぽっちも知らなかった。



知ってたら、そこにあったスタートラインから、あたしは逃げ出していたのだろうか。



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