宵闇
静かに涙が彼の頬を伝う。

でも、そんなことに気づいていないかのように彼はあたしを見つめ、言葉をつづけた。


『俺は……。キミが好きだった。ただ、キミを離したくなかった。エゴ、だよな。』


『あっちもこっちもなんて、そんなの自分勝手もいいとこだよ。でも、離したくなかったんだ……』



思わず、手を伸ばしていた。


彼の頬に手を添えて、その流れる涙を親指で拭う。


愛おしい。


そんな感情があたしを包んでいた。


『俺はずるかったんだ。キミが離れていかないのをいいことに、』


「違うよ」


彼の言葉を、あたしは遮った。

「あたしも好きだったから。あなたのこと、好きだったから。だからこうやって一緒にいたの」

「あたしも、あなたを離したくなかった。こんなのいけないって、わかってても一緒にいたかった」

いつの間にか、あたしの頬にも涙が伝っていた。

痛かった。

心が、張り裂けそうだった。


どうして、出会ってしまったんだろう。

どうして、もっと早くに出会わなかったんだろう。


何を言っても、何も変わらない。

けれど、そう思わずにはいられなかった。


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