ピュア *first love*



うまく伝えられなくて、彼女を優しく抱き締めた。


そんな甘い、二人だけの空間を壊すように、突然豪快に開かれる扉。慌てて、俺から離れるあみ。


「相馬っ! いたいた。ボタンありがとな。妹に報告したら泣いて喜んでたよ」


……ああ、さっきの。



「先約だからな? 後から、他の人にあげたとかなしだぜ」

「分かってるよ」


そう言って、松井は教室から出ていった。


「……ボタンって何?」

「あいつの妹から卒業式にボタンをくれって言われてさ……」

「あげるの?」

「うん。ただのボタンだし……」



俺は軽い口調で言った。だけど、あみの表情はみるみると変わって……。


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