ピュア *first love*
扉を開けると、穏やかな日差しが、本棚の影を床にのばしていた。
懐かしい。
本の香り。
ドキドキする香り。
そして……。
「早かったね」
“初恋の彼”の香りのする図書室。
遅れてやって来た彼は、私に手を差し出してきた。
「ボタン……貰ってくれる?」
「ありがとう!」
一生の宝物だよ。好きな人から、卒業式に第二ボタンを貰える女の子って世の中にどれくらいいるのかな?
「懐かしいね……あみとここで初めてキスしたんだっけ」
「うん」
彼は腰まで伸びた私の長い髪に触れて、優しく笑って見つめてくる。
「あみのアドレスに入れる日付……決めたんだ」
「え?」
「俺の誕生日」
いきなりアドレスの話を始める彼。私はポカンとした表情で見つめた。