切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「おい」
突然後ろから肩を掴まれた。
ビクッと驚く体。
「なんだ…湯川か…」
後ろを向くと相変わらず仏頂面した湯川がいて。
「なぁ、人いないところ行かね?」
そんな湯川の言葉に頷き、場所を変える。
「うわぁ…人、いっきにいなくなった」
花火を見るには絶好の場所。
なのになぜか人がいない。
「ここ、オカンに教えてもらった。
去年は裕実と来たんだ」
珍しく湯川が自分のことを話した。
湯川はこっちが聞かないとあまり自分のことを話したがらない。
「今年は良かったの?
裕実ちゃんと来なくて。」
そう。さっき聞きたかったのはこのことなんだ。
「さぁ?」
さぁ…ってどんだけ適当なワケ?
「ちょっと待ってて」
湯川はあたしを置いてさっきの人混みの中に入っていった。
どうしたんだろ。
人混みキライって言ったからここに来たのにまた人混みに紛れに行くなんて。