切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「いいの?」
日向が聞いてくる。
「何が?」
主語がないんじゃ答えようがないだろ。
「裕実ちゃんに会いに行かなくて、いいの?」
俺は動かす足を止めた。
「今は…大会が大事だから」
そういうと俺と同じく足を止めた日向が俺を睨んだ。
「なんで?なんでウソつくの?
湯川、ホントは行きたいんでしょ?裕実ちゃんのところに。」
どうしてお前は俺の心の中を勝手に覗くんだ。
どうしてお前は遠慮もなく、そんなことを言うんだ、日向。
「行きなよ、裕実ちゃんのところ。
裕実ちゃんがいなくなってもいいの?」
日向の言葉で足が勝手に学校の外へ向かおうとした。
でも、なんとかそれを堪える。
「湯川にとって裕実ちゃんってそんなちっぽけな存在?
いなくなっても湯川の生活は何も変わらないぐらいの存在?
ね、違うでしょ?
どうなの、湯川!」
日向の目が必死に訴えかけてくる。
俺は目を逸らした。
裕実は俺の中でちっぽけな存在なんかじゃない。
裕実がいなくなったら、俺の生活はガラッと変わってしまう。
それくらい、大きな存在だ。
「迷ってる場合じゃないよ!
今、こうしてる時間も裕実ちゃん、泣いてるかもしれないんだよ?!」
その、日向の言葉で俺は走り出した。
最後の大会は大事だ。
でも、裕実だって大事なんだ。