切なさの距離~友達以上、恋人未満~
電車に飛び乗り、駅で自転車を借りる。
猛スピードで風を切る。
裕実、頼むから家にいてくれ。
裕実、頼むから俺の傍を離れないでくれ。
お前がいなくなったら俺…陸上どころじゃなくなってしまう。
「ハァ…ハァ…」
裕実の家に着いたときには息が切れていた。
俺はゆっくりインターフォンに手を伸ばす。
『はーい』
「湯川…ですけど」
今の声は裕実のお母さんだ。
『あら!久しぶりね、貴斗くん!
今、裕実、呼んでくるわね』
裕実のお母さんはそう言ってインターフォンを切った。
裕実、家にいるんだな。
そう思うと急にドキドキと胸が鳴り出した。
【ガチャ】
そのとき、静かにドアが開く。
「ひろ…」
裕実、と言いかけた。
でも中から出てきたのは
「……林?」