切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「で、何があったの?」
小さな神社の石畳の階段に並んで座った。
気温はとっくに30度を超えているだろう。
でも、木陰になっているそこは、それほど暑くはなかった。
「日向に裕実のところに行けって言われて俺、家にも帰らず行ったんだ、裕実の家に」
だんだんと曇っていく湯川の表情。
裏腹に雲1つない真っ青な空。
今日はなんて天気のいい日なんだろう。
「それで俺、あの日のことを説明しようとしたんだ」
湯川は足下に落ちていた小石を拾い階段の下に投げた。
石は階段の途中に落ち、そのまま少しコロコロと転がるとやがて動きを止めた。
「でも裕実は聞いてくれなかった」
神社の前を小学生たちが走って通り過ぎる。
元気だなぁ…小学生は。
「裕実は俺が何を言っても聞いてくれなかった。
それで、アイツ言ったんだよ。
遠距離なんて無理だったんだ、って。
貴斗のことは好きだけど別れよう、って。
俺、言いたいことあったのに、
それなのに…何も、言えなかった。」
湯川は顔を歪めた。
風があたしたちの間を通り抜ける。
さっき湯川が投げた小石がまた転がった。