切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「あ…ゴールだ」
グラウンドに目をうつすと、
ちょうど湯川が1位でゴールしたところだった。
あたしを見つけ、拳を上に向けた。
それに手を振って応える。
あ…しまった。
裕実ちゃんがいることを思い出して、上にあげた手を静かにおろした。
「今、まったくあたしのことなんて目に入ってなかった。
どういうことか、分かる?」
あたしは何も言えなかった。
「日向ちゃん」
あたしは顔をあげた。
「あたしは、傍にいられない。
だから貴斗のこと、よろしくね。
それじゃあ、また機会があったら。
ばいばい」
裕実ちゃんは出口に向かった。
ちょうど、湯川が戻ってくる。
2人がすれ違う。
でも湯川は気づくことなく、あたしのほうへ向かってくる。
湯川の肩越しに裕実ちゃんが見える。
その表情は切なくて、悲しくて。
見ているこっちが泣きたくなるような、そんな表情であたしたちを見つめていた。