切なさの距離~友達以上、恋人未満~
ふと、さっきの出来事を思い出した。
日向が転びそうになったときのこと。
躓いた瞬間に俺が日向の肩を掴んだ。
別にそういうつもりじゃなかったけど
周りから見れば肩を抱いていたように見えたかもしれない。
あのとき…今まで1番顔の距離が近かった。
もう少し近づけば鼻が当たるくらいの距離。
日向のどもりながらのありがとうに爆笑していた俺だがあれはカモフラージュ。
どうしようもないくらいバクバクと音をたてていた心臓を落ち着けるため、あんなに笑っていた。
少し、本当に少しだけど、思ったんだ。
可愛い、って。
俺にこの言葉が似合わないのは分かってる。
でも、思っちゃったものは仕方ない。
日向をあんな間近で見たのはもちろん、初めてで。
本当にビックリするくらい、動揺してる俺がいて。
もしかして俺…日向のこと、意識してんのか?
………そんなはず、ないよな。
だって意識してたら裕実のことを思い出して悲しくならないだろ?きっと。
もし、もし俺が前に進んでいるのなら、
次の恋をしているのなら、
裕実を思い出してもどうも思わないはずだろ?
俺の言ってることって…違うのか?
いや、きっと当たってる。
だって俺が日向を意識するなんてアリエナイ話だろ。