切なさの距離~友達以上、恋人未満~
そうすると日向は顔を上げた。
でもペースは上がらない。
おい、どうしたんだよ、日向。
観客席がざわつく。
この県で日向を知らないヤツはいない。
隣の市にいた俺ですら日向の名前は聞いたことがあった。
不動の長距離エース、湧井日向
今、そいつが確実にペースを落とし、3位に成り下がろうとしている。
観客席がざわつくのも仕方ない。
県大で3位なんて1位か2位が棄権しない限り全国へはいけない。
頼む…頼むからもう少し頑張れ、日向。
俺は心の中で必死に祈る。
3位が迫ってくる。
ゴールが近づく。
そしてほぼ同時に日向と3位のヤツはゴールラインを踏んだ。
それと同時に日向は、グラウンドに倒れた。
「…………日向!!」