切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「日向…日向は?!」
アキと増川が必死な顔で俺に聞く。
でも俺は首を横に振ることしかできない。
「………日向」
アキは心配そうな顔で、宙を見つめている。
「お前ら…まだ競技あんだろ。
日向のことはとりあえず置いといて自分のことに集中しろよ」
俺はそう言って観客席に戻った。
同じ学校のヤツらが俺を見る。
でも今ここで言うことは何もない。
俺はみんなと少し距離を置いた場所に座った。
あのバカ…
何大事なときに倒れてんだよ…
頭を抱える。
俺が今、悩んだって仕方ない。
そんなこと分かってる。
でも、でもやっぱり考えてしまうんだ。
4ヶ月一緒に練習してきた仲間だから。
暑い日も、雨の日も
ずっと、一緒だったから。
「これより100メートル女子の部を始めます」