切なさの距離~友達以上、恋人未満~
けど、逃げられるワケがないことも分かっていた。
だってあたしまだ、中学生だもん。
逃げられるワケがない。
何も1人でできないただのひな鳥。
「………ひな、た?」
突然、あたしを呼ぶ声がして足を止めた。
ってなんであたし…ここに来てるんだろう。
「もう体調、いいのか?」
そう言ってあたしの顔を覗き込むのは湯川だ。
ここは4日前まであたしが元気に走っていた公園。
湯川との自主練の場所。
ここに来るつもりなんて1ミリもなかったのに。
気づいたら足がここに向かっていた。
「今日、退院したばっかり」
「なら家で…「いいの」
湯川の言葉を遮った。
「もう、いいの。
また倒れようが、死のうが、もう、いいの」
あたしはベンチに座った。
俯いているせいで湯川の表情が分からない。
「………何、バカみたいなこと言ってんだよ」
その声は今まで聞いた中で1番低く、
そして1番、悲しい声だった。