切なさの距離~友達以上、恋人未満~




けど、逃げられるワケがないことも分かっていた。


だってあたしまだ、中学生だもん。

逃げられるワケがない。


何も1人でできないただのひな鳥。




「………ひな、た?」


突然、あたしを呼ぶ声がして足を止めた。

ってなんであたし…ここに来てるんだろう。



「もう体調、いいのか?」


そう言ってあたしの顔を覗き込むのは湯川だ。

ここは4日前まであたしが元気に走っていた公園。


湯川との自主練の場所。


ここに来るつもりなんて1ミリもなかったのに。


気づいたら足がここに向かっていた。




「今日、退院したばっかり」


「なら家で…「いいの」


湯川の言葉を遮った。



「もう、いいの。

また倒れようが、死のうが、もう、いいの」


あたしはベンチに座った。

俯いているせいで湯川の表情が分からない。





「………何、バカみたいなこと言ってんだよ」




その声は今まで聞いた中で1番低く、

そして1番、悲しい声だった。










< 201 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop