切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「お前…自分が何言ってるか分かってんのか?
なぁ、日向」
握った湯川の拳が震えていた。
もしあたしが男だったら、殴られていたかもしれない。
「バカじゃないのか、お前。
何がまた倒れても、だ。
何が死のうが、だ。
ふざけんな。
ふざけんじゃねぇ」
湯川が顔を上げる。
その目は怒りと悲しみで色を失っていた。
「ちょっとは…俺や、アキや増川、
自分の親の気持ちにもなってみろよ!
今回のことで、どれだけお前を心配したと思ってんだ。
当たり前のように1番最初にゴールすると思っていたお前が
走ってる最中にフラフラになって、
ゴールと同時に倒れて、
全国行けなくて。
そんなお前をどれだけの人が心配したと思ってんだ。
なんだよ、その顔。
この世の終わり、みたいな顔しやがって。
お前だけが苦しかったワケじゃないんだ。
俺だって…俺だってお前と同じくらい…」
あたしに背を向ける湯川。
次の言葉は続かない。
だからあたしは口を開いた。