切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「………あ?」
なんでいつも呼びかけると返事はあ?なの?
しかもワンテンポ遅いし。
なんてことを考えながら足を進めた。
「湯川貴斗。
南第三中長距離男子エース
県大2位…だよね?」
南第三中は隣の市の中学校だ。
5周以上グラウンドを走った湯川貴斗の額から汗が流れた。
「…………まあ」
まあってどんな返事なワケ?!
もうちょっとあるでしょ!
なんてこと、言えるはずもなくあたしは続ける。
「なんで…「湧井日向」
続けようとした言葉を湯川貴斗に遮られる。
「湧井日向。
梶中長距離女子エース
2連続県大1位…だろ?」
「…知ってたんだ」
あたしのこと、湯川貴斗は知ってた。
ただそれだけのことがなぜか嬉しかった。