切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「失礼します」
職員室に入り、山本の元へ一直線。
「まあ立って話を聞くのも疲れるだろ。
ここ座れ、ここ」
山本は隣の席のイスを自分の方に引っ張った。
そしてそのイスに俺は座る。
「今日呼び出したのはな…その、進路の話なんだが」
歯切れの悪い山本の喋り方。
言うなら言うではっきり喋ろよ、と心の中で呟く。
「お前…もちろん、高校でも陸上、続けるんだよな?」
「…………………」
俺は黙り込む。
正直、まだ迷ってる。
陸上は辞めて、バイトして少しでも家計を手伝いたい。
オカンに楽してもらいたい。
そんな感情とともに
陸上を続けたい。
ずっと、陸上と向き合っていたい。
そういうキモチもある。
オカンに迷ってることは言ってない。
どうせ言ったら
「子供がお金の心配なんてするもんじゃない。
陸上、続けな」
そう言うに決まってる。
それが目に見えてるから。