切なさの距離~友達以上、恋人未満~





『いつもの公園で。

今から家出るね』


すぐに返って来た返信。


俺は携帯と財布をポケットに突っ込むと家を飛び出した。


10月下旬。

少し肌寒いが過ごしやすい時期で。


公園は思いのほか、賑わっていた。



空いているベンチを見つけ、腰を下ろす。


目の前を小さな男の子と女の子が通り過ぎて行く。

俺にもあんな時代があったんだよなぁ。


悩みなんてなくて。

ただ笑って。

無邪気にはしゃいで。


毎日が楽しくて。


そんな時代の記憶なんてこれっぽっちも覚えていないけど、

なんとなく、気持ちだけは覚えている。



それに比べて今は…


イヤなことばっかりで。

悩み事は尽きないし。


楽しいことはイヤなことより少なくて。


そんな毎日がどうしようもなくキライで。


逃げ出したい。

そう思ったことが何度あっただろう。









< 282 / 313 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop