切なさの距離~友達以上、恋人未満~
「あたし…」
「あたし…」
俺の気のせいだろうか。
もし、気のせいじゃないとしたら裕実はきっと、泣いている。
胸がざわつく。
「やっぱり…寂しいよ…」
人混みにかき消されてしまいそうなくらい小さな声。
俺は少し強引に裕実の腕の中から逃げ出した。
そして腕を掴み、人の間を縫って路地に入った。
人の気配はまったくなく、街灯もない。
それでも裕実の顔はしっかり見ることができた。
月明かりのおかげで。
「…泣くな、裕実」
俺は裕実を引き寄せる。
やっぱり俺の予想は正しかった。
裕実の頬と瞳がぬれていた。