お預け中?
俺が口を開くまでジッと一眼レフカメラを構えているカメラマン。

ボールペンを握ったまま、期待を込めた眼差しでみつめる女性記者。

目の前にいる報道陣達を見渡して一瞬怯みそうになった。

俺は一度だけ静かに深呼吸をした。

そして

「交際宣言は事実ではありません。なので、否定の意味を込めてあえて何も語りませんでした。今、本当に忙しくて女性と付き合う時間なんてありません。もし付き合う事があれば一緒にいる時間がなくて相手に悲しい思いをさせてしまいます。それに、僕は恋愛をするといつも一緒に居て離れたくなくて仕事が手につかないほどになってしまうんです。なので、こんなに沢山の仕事を頂いているありがたい時期に彼女は作りたくないです」

ごめん・・・。

最後の言葉は嘘だから。

本当にごめんね。

どこのテレビ局のどの番組だか分からないけど、部屋の後ろのど真ん中に置かれたカメラを真っ直ぐ見つめ、放送を見るであろう彼女に向かって心の中で謝った。



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