____苺の季節____
何処までも続く祭りの露店。

「わぁ、沢山あるね」
「すっげーな」


祭り独特の雰囲気が良いな。

お父さんに肩車されてる幼い男の子や、

柔らかな三尺帯に、鈴の下駄を鳴らして歩く子供達を眺め、昔を思い出してた。


太郎ちゃんに、肩車してもらったな。

ふわふわしてる帯、懐かしいよ。


なんて、遠い日を想うと胸の奥がちょっぴり沁みる。

でも、隣を見上げると、子供みたいに笑う鳴海がいて、思い出と、今が、同じ位大切だと思った。


「あ、あった、ハッカパイプ…、あたし、これ大好きでいつも買ってたんだ」


「よし、買ってやる」


「え?良いよ~、あたしだってお小遣い持ってきてるから」


「いいって…、ほら、好きなの選べ、ウサギ?ウルトラマン? 」


「えっと、じゃ、こっちの白いウサギ!

アリガト、次、鳴海にもあたしが買ってあげるね」


あたし、こうやって買い物をするデートが初めてで、お金を出してもらう事に気を遣っちゃうって思った。

「はい、ほらよ」


パイプを首にネックレスみたく掛けてくれる鳴海を見上げる。


「ん?」


「ううん…、アリガトね」


みんな、大体オトコが出すのが当たり前…って言ってたけど、そうなのかな。

わかんないけど、どうすれば良いんだろう。

あたしは、きちんと同じく出し合うのが良いな。

わかんないけどね。答えなんか出ないまま、鳴海を見上げると、目を丸くしてこう言った。


「杏奈、ウサギ、似合いすぎ、ガキみてー」


ほっぺを膨らませると、「嘘、嘘だって、可愛いってこと」なんて言いながら、にかっと笑う。


もう、ずるいな。

鳴海って、意地悪のようで優しくて、それに、そんな笑顔を見たら、やっぱり凄く好きだって…、大好きだって、思っちゃうよ。

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