____苺の季節____
「俺、金魚すくい、職人技だよ」


そう言った鳴海は、本当に上手だった。

3匹もすくったから、露店商のおじさんも、


「お兄さん、こりゃうまいな…、今どき珍しいね、若いのに」


と腕組みして誉めていた。


「凄い、鳴海!金魚可愛い~」


大喜びのあたしは、ぷっくりと水で膨らんだビニール袋の中の、朱色の和金2匹と、小さな真っ黒い出目金1匹をじっと見つめる。

「お前、見すぎ、食う気かよ」


「やー、そんな訳ないでしょ!」


鳴海の肩をバチンと叩いて笑い合った。


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