____苺の季節____
花火大会の時間が近付くと、人々が川辺の公園や橋に向かって流れて行く。



あたし達も、ギュウギュウに混む波間に身を預け、橋の上に辿り着いた。



鳴海の手を握り、人々の歓声と共に空を見上げる。




あたしは息をのんだ。



夜空には、煌めく大輪の花が、見事に次々と美しく咲き誇る。



ドーンとお腹に響く音、パチパチ儚げに消えゆく音が、連鎖し、色とりどりの花を咲かせて行く。




宇宙に繋がるキャンバスは、

闇と美しい色の光を交互に魅せていた。





闇夜に咲く一瞬の輝きに、何かを遥か想う。






あたしは願いを込めた。



命をお守り下さいと。


親と子の愛の絆を、
お守り下さいと。



あたし達の浴衣姿に、若かかりし日を重ね、目を細めてた美しい笑顔。




ふと、隣で空を見上げる鳴海の鼓動が優しく聞こえた気がした。


祭りの雑踏の中、右手から伝わる愛しい温もり、


この温もりは、あのヒトがいたからこそ、ココにある。



あたしは、静まる闇夜、

ヒトカケラの光に、

星座の星にも届けと瞳を閉じた。




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