____苺の季節____
「お前の夢は何だよ……、何になりたい?

将来の目標とか、希望する職種とかは何」



「夢……」



あたしは、輝く先生の瞳をどんな瞳で見たんだろう。


あたしの夢?



あのね、あたしは……。



「アイツの夢知ってるか」



「鳴海の?」



真顔で頷く先生。



そう言えば、前に聞いたんだ。


「鳴海も、お母さんやお兄さんみたく、先生になるの?」って。



鳴海は首を横に振った。



「今はまだ……」



はっきり決めてなくてそう言ったんだと思ってた。




あたしも、きちんと決めてなかったし。


夢や未来は、ただ、ただ遠くて、イメージしろと言われても、この心に描けない。


あたしね、心のレンズがぼやけてるのかもしれない。


未来が見える望遠鏡だよって手渡されても、


覗く小さな穴からは輝くモノは見つけられない。


きっと、ぼやけた万華鏡。

くるりと回しても、キラキラ動く欠片の輪郭すらわからないの。


もっと心のレンズを磨いて、

もっと明るい光に狙いを定めて、


うんと空を見上げるように覗かないと……、ダメなのかもしれない。

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