____苺の季節____
放課後、4階にある音楽室の大きな窓から広いグラウンドを見つめてた。



野球部やサッカー部、

ハンドボール部がいて、

一番、奥の場所。



あたしは、風を見てる様だった。



速い……、速い風。



鍛え抜かれた体から、瞬間的に生まれるスピード。


崩れない美しいフォーム。

鳴海、風みたい!



颯爽と、飛ぶように走り抜く風……。


逞しい筋肉を付けた両足が、前へ前へと薄茶色の土を強く蹴る。



あたしは、すっかり心奪われた。





「アイツ、風と走ってるみたいだな」


「ホントだ、凄い、すっげー速い…、おい、あれが杏のオトコか」



いつの間にか窓辺に並んでいた、彰先輩と健先輩にそんな風に言われて顔が熱くなった。


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