____苺の季節____
「そうです……、あたしの彼氏です…よ」


視線は鳴海を追いかけたまま、照れながら答えた。


「へぇ、妬いちゃうな」


彰先輩の台詞が少し引っ掛かったけど、しっかり耳を傾けた訳じゃなくて、いつもの冗談だと思ってた。


スタートからゴールまで、あっと言う間に走り抜ける鳴海を目で追うのに必死だったから。


速い!格好いいよ。

風と走る…、その通りだね。


鳴海が白衣を着た姿も目に浮かぶ。

きっと医者になれる。

うん、きっとなれるよ。



スーパー…ドクターか。


凄いな……。



「先輩達、風と走るなんて上手い事言いますね、

ホントそんな感じ…」


隣にいた彰先輩に話し掛けると、グラウンドの方を見つめ小さい声で呟いた。



「幸せ者だな、杏を独り占めかよ…ったく、

ムカつく位、格好えーな」


「え……、何か言いました?」




「この鈍感娘」



ムスッとしたかと思うと、あたしの頭を小突いて去って行った。


な、なによ。



「やーやー、ゴメンね、杏……、


彰はバカだな~、ってか、フォローする周りの事考えろっつーの、


あ、いやぁ、気にしないで、な?」


健先輩は優しく頭をポンポン叩いて去って行く。

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