____苺の季節____
「彰先輩が……、あたしを……」

先輩の言葉や仕草を思い返すけど、

恋という甘い感情が含まれていたなんて…、全く気付きもしなかったあたしは、

やっぱり、嫌な鈍感娘だと思った。


あたし、どうすれば良いんだろう。


「杏ちゃん?

そんなに考え込まないで良いんだよ、

杏ちゃんは、杏ちゃんらしく……、ね?


彰は、彰なりの答えをきっと見つけるよ」



西村先輩は、パッと立って窓に背を向けた。

あたしの目をじっと見る。


「好きな人が、同じく自分を好きになる……、なんて決まってないもん、

想い合える人がいるって、
素敵な事だよ、杏ちゃん、
大切にしなきゃね……、

あの人」


もう一度、窓の向こうを眺めた。


「あ!杏ちゃん…、彼、こっち見てる、杏ちゃんを探してるのかな?ほら」


あたしはもう一度、窓枠の景色から鳴海を探す。


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