____苺の季節____

約束

部活が終わり、教室に戻ると、鳴海があたしの机に腰掛けて待ってた。


「お疲れ!杏奈、一緒に帰ろうぜ」


一瞬、驚いたけどやっぱり嬉しかった。


「うん…!そうだね、こうやって陸上部が学校で練習するなんて滅多にないもんね、

さっき……、さっきね、
格好良かった!

凄く、すごーくね」


鳴海の前に駆け寄る。


「ん、サンキュー」


にんまり笑って言うと、急に真顔であたしを抱きしめた。


頑丈な胸や腕にギュって包まれると、汗の匂いが少ししたけど、走り終えた爽やかさが伝わって嬉しかった。


でも、いつもより力が強くて戸惑う。


「お前…、泣いてただろ?」


「え?あ…、鳴海、見えてたの?

ちょ…、ちょっと苦しい…よ」



「ごめんな…、ホントごめん、

俺といるから悲しい出来事に付き合わせちまってるよな?

俺、泣かせるって分かってるのに、それでもお前と離れたくなくて、


お前の泣き顔なんか見たくないのに、


悲しませたくないのに、


わりぃな…、ホント、ごめん」



切なさを吐き出すような台詞が痛かった。


あたしは、腕の中、鳴海の顔を見上げて一生懸命伝えた。


「鳴海?あたしは鳴海と出逢えて、嬉しくて幸せだなんだよ?

鳴海のお母さんとの出逢いも素敵な出逢いだと思ってるよ?


そりゃ…、か、悲しい事だってあるけど、


でもね、全部、全部が大切な事に思えるの、


鳴海の事が好きだから、

全部、ぜーんぶ、大切だと思ってる、


だから、鳴海のせいでとか、そんな風に言わないで…、

あたし、あたしね、

全部を見つめる勇気、

鳴海に教えてもらったんだから」


そこまで言うと、鳴海があたしの口を塞いだ。


ふんわりと優しく、そして強い想いを込めて深く。


あまりの熱さにドキンッと苦しくなる。

驚いたけど、強く抱き締められるまま鳴海に身を預けようと思った。


不思議な心地よい感触がして、凄く全身がやっぱり熱いよ?


「ダメだ…、お前、やばいって」




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