____苺の季節____
あたしは、一生懸命に階段をかけあがる。


教室は4階。


足が縺れそうになるし、
頭の中も、ぐるぐると回る。


一瞬、目眩がした。

階段も歪んで見えて、

転ぶのがわかった。



スローモーションみたく、床が近づいてくる時、腕を後ろからぐいっと引っ張られ、体の脇を支えられた。

ふわっと体が浮く。


そして、ゆっくり階段の踊り場におろされた。


覚えのある、温かさと力強さにハッとして顔を上げる。




「杏奈、ごめん……、ごめんな、

俺が悪かった、

本当にごめん、

許してくれ、

調子に乗りすぎた、

本当に、本当にごめん!」



アイツは頭を下げたまま言った。


「なんか、こう……、舞い上がってたっつうか、

嬉しい事があったからって、

して良い事と、悪い事、

きちんと考えれば良かったって思ってる」





「嬉しい事……?」



ツンツンの髪を見つめて小さな声で聞いた。








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