____苺の季節____
あの出逢いから鳴海への気持ちは変わらない。


紅林君の優しい気持ちを知っても、彰先輩の想いを知っても。


声に出して言えば良かった。


「あたしも鳴海を想い続ける、信じる、だからあたしの事も信じて」


でも、声にならなかったのはどうしてだろう。


鳴海の肩越しに見えた水平線と漁師の船。


カモメの群れが空に舞う。

静かに立ち上がろうとする鳴海の腕を掴んだ。


「ん?」


「あたし、好き…、鳴海の事……好き」


それしか言えなくて……。心で焦る。鳴海が大きな想いをくれたのに、あたしは上手く伝えてない。
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