____苺の季節____
「マジでやんなよ」

「だって、気合い入れなきゃ、この虫刺され薬を目の下に塗ると眠気覚ましに良いって……」


彰先輩は大きなため息をゆっくり吐いた。


「ほら、やっぱ眠いんだろ…、それと確かに先輩達はやってるよ?あと、効く~って目薬とか…な、でも杏はダメだろうよ」


頬っぺたをムニッと摘ままれる。


「どうして?イタタ…痛いですって」


「肌が弱いだろ、ただでさえ白くて血色わりーのに、それで荒れたらサイアク」

「ちょ…っと、離して下さい、心配してるのか、意地悪してるのか分かりません」

ゆっくり摘んだ指を離して頭ひとつ分上からじっと見つめる。

その眼差しは色々思い出させるから困るよ。


彰先輩があたしを、…す、好き?

西村先輩や鳴海から聞いた事がギュウッと心を苦しくさせる。

困って俯くと彰先輩は言った。


「彼氏とまだ連絡付かないのか?今日で3日目、ロビーの公衆電話でかけてるけど、全然繋がんないんだろ?

合奏中だって、30小節の休み、窓の外見て上の空だし、

上手くいってなくて辛いのか?彼氏とケンカでもしたのかよ」


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