____苺の季節____
クラス委員や生徒会役員は、立候補者が出なくて、先生が鳴海に言った。


「えーと、進藤 鳴海、明日まで立候補が出ない場合、担任の推薦で、お前、頼むな……、

小学校、中学校と生徒会会長してた経験と、

入試の成績で決めてるから…、

まぁ、試験の成績トップファイブに入るのはもう一人いるけど、

まず、やるならお前だ」


ニカッと笑い、出席簿をパンと手の平で打つ。


「みっちーがそう言うなら、しゃーねーかぁ……、クラス委員の方だけね、1年でいいんでしょ?


オッケー、アイサー、分かりました」



ふたりで頷き合ってる。


先生を『みっちー』呼ばわり、生徒会会長経歴、成績優秀?


鳴海って、一体、何者なの?


すごく気になる。

これが、あたしの本音。


アイツ、

さっき、あたしに『一目惚れした』なんて言ってたけど、


あたし、どうすれば良いのか分からないよ?


だって、

あたしね、

今まで、

片想いばっかりで、

レンアイなんて、

遠い遠い

絵空事みたいに

思ってた。


そう、

遠い遠い

絵空事。



だから、


よく、わからない。



チャイムが鳴り、

「杏奈、一緒に帰らないか?」

鳴海が、あたしの目の前に来て言った。



「あ、ごめんね、あたし、
F組の友達と帰る約束してる」


「あっ、そうなんだ、オッケー、じゃ、明日な」


鳴海は、あたしの頭をクシャクシャと撫でて、にっと笑い、教室を出て行こうとする。


「鳴海……!」


あたしは、何故か呼び止めた。


「ん?何」


振り向く鳴海に、何て言えば良いのか言葉が見つからない。


「ううん、何でもない!」


あたし何やってるんだろ。


「バーカ」


鳴海が笑う。




「バーカ」


あたしも笑った。



 

< 25 / 180 >

この作品をシェア

pagetop