____苺の季節____
中学の時は、歩いて5分の、海を見渡す学校に通ってた。


高校は遠いの。バス通学も考えたけど、島ちゃんと同じにしたくて自転車を買った。

だって、一緒が良い。


島ちゃんが少し振り向いて笑う。


「思ったよりも早く着いたね」


「うん、30分位だね」


チラッと腕時計を見て答えた。


島ちゃんはキーッ、キーッとブレーキをかけながら、校門を通り抜け、駐輪場を目指す。


後に続きながら校舎の玄関前に目をやると、


『祝・第137回 南陽高等学校入学式』と筆で書かれた立派な垂れ幕が見えた。


薄い水色の空とクリーム色の校舎が、とても眩しかった。


裏手には桜の木。


風とお話してるみたいに、可愛い色の花が揺れ、眺めていると優しい空気に包まれる。


桃ちゃんみたいな色だね。

鼻をくすぐる風に笑う。


あたしの胸の中は、柔らかいパステルカラーで満ちあふれ、


憧れの高校生活が始まることに喜びを隠せなかった。



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