____苺の季節____
こちら側からは、鳴海の表情は見えない。


どんな瞳で彼女を見つめてるんだろう。


「お前よ、マネがどんだけ大変かわかってんのか?」

「頑張るから、色々教えてよ」


「…ったくよ、まずわかったから、腕、離してくれないかな」


百合ちゃんの手に、自分の手を重ねる鳴海。

ギュッと握った…。


少し顔を赤らめる百合ちゃん。


あたしは目を伏せた。


ダメだ、ダメだ……。


見なかった事にしよう。



机の上、詩織ちゃんが、あたしの手を握る。


「杏…奈ちゃん?

大丈夫?」



「ん?平気、平気~ 、


あ、あたし、ちょっとトイレ行ってくる、


トイレ、近いと困るね、

あはは、ダッシュで戻るから」


パッと席を立ち、ピカピカの廊下を走った。
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