____苺の季節____
意思表示を、わりと躊躇せず、ズバッとはっきり言う芯の強い里ちゃん。


その里ちゃんが気を遣って、胸に仕舞っていてくれたのか。


「…ごめん、里ちゃん、気を遣わせたね」


「いや、なんも……、

と言うより…、杏、

焦ってすぐに答えを出そうとしなくて良いんじゃないかな?

少し、待ってなよ」


里ちゃんがあたしの肩を叩く。


「ふむふむ…、そっか、なるほどね、

じゃ、もう少し経過を待って、今度ゆっくり語ろうか」


西村先輩が締める。


「はい、ありがとうございます」



「じゃ、譜面のA①からC③まで、良い?」


『はい!』


サッと楽器を構え、ブレスする。

3人の音が、広がり、重なりあう。


「やめ、杏ちゃん、B①の3拍目、そこのアクセントもっと強く、くれるかな」

「はい!」


「里ちゃんは、少しCの音(ドイツ音階でツェーと読む、ドの事)、やっぱりピッチ下がる」

「はい!」


合奏開始までの、確認と仕上げをしていた。


「よし、音楽室に移動…、合奏隊型ね」


あたし達1年生は、初の村井先輩の指導に緊張と不安を抱きつつ、 楽器と譜面台を手に音楽室へ向かった。


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