____苺の季節____
一瞬、斜め前方にいる沢田先輩の肩がピクリと動き、

今のあたしの態度が悪かったというのを、瞬時に悟る。


あー、やっちゃったな……。


反省したけど遅いよね。


ゆっくりと西村先輩の方を見る。


(いいって……!前を向いてなさい、今のはマズイけど、大丈夫だから)


小声と軽いジェスチャーで答えてくれた。


「はい、B(※べー、ドイツ音階でシ♭の事)下さい」


急に真顔になり、タクトを上げる。


※チューニングによく使う
※ドイツ音階は共通の音に合わせた言い方…楽器の種類で譜面上の音は異なる。
※クラリネット等のC管(つぇーかん)楽器はドの譜面の音になり、アルトサックス等のES管(えすかん)楽器はミの音を吹く。


全体を見回し一人ひとり、ピッチの上がり下がりを、
タクト(指揮棒)とアイコンタクト、ジェスチャーで指示した。


「やめ、普段は一本ずつ合わせるけど、ん、今日はこれでよし!」


良いのかよと思ったけど、確かに全員のピッチが合った。

耳が良いんだろう。絶対音感なんて当たり前にあるんだろうな。
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