____苺の季節____
同期の仲間に手を振り、

ひとり、桃ちゃんと帰る道。


暮れていく夕方の風が優しかった。




胸の中、自然と浮かぶメロディーをハミングしてた。


あ、沢田先輩のソロ……。このメロディー、好き。


優しく澄んで、なんて美しいんだろう。


何度も繰り返しハミングしてた。


風にメロディーを溶かせばだんだん切なくなって、鳴海の事を思い出す。




頭の中、音楽モードにして頑張ってたのに。




思い出しちゃっ…たじゃん。



鳴海、会いたいな。

会いたい。


百合ちゃんを追う背中と、熱かった指を思い出した。



ねぇ……、もう、泣くの我慢しなくて良い?


桃ちゃんは返事しないけど、次々涙が頬を伝った。



手を伸ばせば抱き締める事が出来たのに。


あの、手のひらの温かさが恋しくて、恋しくて、


耳元で聞いた声が恋しくて、

ずっと、涙が止まらなかった。


ハンドルを握る手を交互に離し、滴を拭う。


鳴海、

鳴海。


こんなに好きなのに。


あたし、


どうすればいい?



ブレーキをかける。


桃ちゃんから降り、押して歩いた。


涙で前がよく見えないもん。


とぼとぼ、とぼとぼ歩いて帰った。




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