____苺の季節____

SWEET HOME

桃ちゃんを押しながら、心に風を吸い込んで、一歩、一歩、我が家を目指す。


もうすぐ、家だ。

でも、まだ帰れない。


海が見える高台に、桃ちゃんを停めた。


胸のポケットから、小さな鏡を取り出して覗く。


やっぱり、このままじゃ帰れない。


緑色の芝生に座り、手のひらでパタパタと両目を扇いだ。


目と鼻が真っ赤。


こんな顔で帰ったら、ママも太郎ちゃんも心配する。

兄ちゃんだって、きっと。

笑って、杏奈。


楽しい事を考えよう。



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