____苺の季節____
今どき、携帯電話を持たない高校生なんて、あたしだけだよ。


「杏奈を守るのが僕の仕事、心配するのも僕の仕事」

そう言って、融通がきかない。


「あたしの人生なのに、そんなの親のエゴだよ!

明日何があるかわからない時代なのに、後悔なんかしたくないもん、

電話が欲しい!」


そう言うと、


「親に食わせてもらってる子供が何を言う、バカタレ、
携帯電話がないからって、人生が終わるのか」


そんな太郎ちゃんが、うざくて、嫌いだった。


夫婦仲も悪かった時期もあり、幼い頃から、太郎ちゃんの偏った頑固な考えをママに押し付け、いつもママを怒鳴り、泣かせてた。

物心ついた頃から、夫婦の仲裁役をし、顔色を窺い、おどけてみたり、甘えてみたり……。


きっと、あたし、家族みんなを繋ぎ止めておきたかったんだと思う。


ママを守るのは、あたし。
ママを泣かすアイツは嫌い。

頭ごなしに何でも否定するアイツ、自分がいつも正しいと思ってるアイツが嫌い。


だから、父親なのに、

「お父さん」とか、「パパ」なんて呼びたくなかった。


反抗心、少しの憎しみ、全てを愛嬌に丸め込んで、

「太郎」「太郎ちゃん」

そう呼ぶようになったのは小学校高学年の頃かな。

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