____苺の季節____
え?え―!?


キャー、やだ。ちょっとやだ。


「あの……!やだ、誰?離して~」


腕からすり抜けたいのに、びくともしない。

強い腕。

学生服の上からも分かる筋肉質の体。

ホントに離して。

そんなにきつく抱き寄せないで!

もう!



「あら?顔を真っ赤にして可愛いねぇ、オトコ苦手なの?」


違う、違う。

そんなんじゃない。

ほら、周りの子達が見てるって。



「お願いだから離して下さい」

「ぷっ、何で敬語なの?じゃあさ、名前を教えてくれたら離す」


「ほ、星 杏奈(ほし あんな)です……、わ、もう、言ったでしょ、離してよ」


「やべー、めっちゃ可愛い!顔だけじゃなく名前もカワイイ」


耳元で男らしい声が響くから、耳を塞ぎたいよ。


力が抜けた時、さっと腕から抜け出して睨むように見てやった。


「その上目遣いも男心をくすぐるね~」



はぁ…、相手にしたくないタイプ。

進学校に似合わないチャラチャラした感じ。前髪もツンツン立たせて、どちらかと言えば怖いでしょう。


あたしは無視して歩き出し、G組の立て札がある椅子の一番後ろに座った。

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