____苺の季節____
太郎ちゃんは、きっと、あたしの内にある何かを察しているんだと思う。


だから、『心配病』で、躾にうるさかったはずの太郎ちゃんが、

「太郎」「太郎ちゃん」と友達みたく呼び、ふざけ合う様に接するあたしを受け入れてるんじゃないかな。


兄ちゃんも、困った時には然り気無く『助け船』を出してくれたり、気が向けば、進路についても話を聞いてくれる。


あたしは、それで良いと思ってる。


そして、自分の部屋に行った時、ゆっくり「あたし」を見つめるの。

あたしの心を。

大好きな桃色のカーテンや、ベッドや小物に囲まれたあたしの世界で、将来や希望を探したり、恋しい人を想ったり、勉強したり、疲れて眠ったり。


大切で優しい我が家。


「杏奈、晩御飯のシチューが出来たわ、お兄ちゃん呼んで来てちょうだい」


「良い匂いがしてたもの、ホワイトシチュー、やったね!

兄ちゃんも今日は早かったじゃん、

呼んで来るね!

太郎ちゃん、お願い、テーブルのセッティング、ママの手伝ってあげてよん」


「はいはい……、階段で転ぶなよ」


ほら、あったかい。


「にいちゃーん、ご飯出来たよ!

ホワイトシチュー!」


「あいよ~、今、降りる」


これで良い。


家族がいる幸せを噛み締める。

【ここ】があたしのスイートホーム。

うまく言えないけど、生きるエネルギーの源があると思うんだ。

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