____苺の季節____
「行ってきます」

笑顔で桃ちゃんのハンドルを握るあたしにママが言う。


「昨日は眠れた?

大丈夫よ、

恋も勉強の内、

杏奈は魅力的な女の子よ、
今日は良いことがあると良いね」


驚いたけど、さすがママだなと思った。


そして、ちょうど会社へ行く太郎ちゃんも、スーツ姿で車に乗る所。


あたしに声をかける。


「おーい、杏奈、車に気を付けるんだぞ、周りをよく見てな」


「はーい」


2人を見てると、やっぱりあたしと同じパーツに目がいくよ。


明るい癖のある栗毛は、太郎ちゃん、

白い肌はママ。


あたしは2人の子供。


「じゃね」


2人に手を振り、桃ちゃんをこぎ出せば、あたしの髪もふわり、ふわっと、風に靡いた。



向こうに見える、穏やかな煌めく波も美しい。


「よし、桃ちゃん、どんどん行くよ」


ペダルの回転を上げる。


風は、そよそよと優しく、気持ち良く、夏の香りを纏い始めていた。




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