____苺の季節____

初カレ

駐輪場から真っ直ぐ、玄関を目指し歩いていると、校舎の窓から声が聞こえた。


「ほら、来た来た!あの子、あの子だ…」

「へぇ~、良いんじゃねーの?」


ピイッと鳴る口笛。

見上げると、3階の教室の窓辺に数人の男子生徒。
確か、2年生の教室だよね。

「あ、こっち見た、見てるって」


「ねぇ、君、今度、俺達と遊ばね~?」


君?え、誰?


立ち止まり、キョロキョロ辺りを見回した。


「おもしれー、可愛いな、
君だよ、そこの、キ、ミ」


「え?あたし?」


人差し指で鼻を指す。


「待ってて、今行く」


はい?何で……。


やだよ、誰が知らないあなたの為に待たなきゃならないの。


あたしは、聞こえなかった振りをして、急いで玄関に入る。


靴を履き替えて、階段を上がろうとした時、壁と手すりの辺りに腕が現れて道を塞がれた。


「待ってて欲しかったな~」

さっきの人?

からかう様な声。


「まださ、時間あるでしょ?

ゆっくり話したいなぁ…、
どう?」



香水?この人が近づくと甘い香りがする。


「俺、草島 陽平(くさじま ようへい)っていうんだけど、ケイバン教えて?

て言うか、いいから、携帯だして…、赤外線すっから」


「あの、携帯は持っていません……、


あの、通して下さい、


困ります」



「何なに~、嘘でしょ、
『持ってません』なんて、

そんな純情ぶらなくて良いからさぁ」






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