____苺の季節____
視聴覚室前の廊下。

コの字型になってる校舎の端。


手を繋いだまま、静かな壁に寄り掛かるとひんやりして気持ちが良かった。


「鳴海?」

「ん?」

「さっきはごめん、あたし、つい」

「あ、いや…、良い…よ、
すっげー嬉しかったから」



鳴海が笑う。


「ねぇ…あたしたち」

「え?あぁ…うん」


鳴海の真っ直ぐな瞳が近づく。

やぁ…熱い…よ。

肩に大きな手を置く。


「杏奈……、キス、初めてだろ?」

耳元で囁く声がくすぐったい。

「え、や、やだ、わかるの?」


鳴海はクスクス笑う。


「だって、痛かったぜ、ココにした時」


あったかい手のひらで、右の頬っぺたをそっと撫でる。


入学式の日の事を思い出して、カーッと熱くなったあたしは俯いた。



鳴海は両手であたしの頬っぺたをゆっくり包んで、顔を覗き込むように言った。


「でもよ…、あれで解った、あん時、すっげー好きかもって思ったんだ、杏奈のピュアな所がマジで可愛いくて」


「や、やだ、何言ってるの?今、可愛いって言ったでしょ、嘘だよ、そんなの違うもん、あたしが可愛いなんて、

可愛いのは、島ちゃんとか詩織ちゃんとか……、

ほら、ゆ、百合ちゃんみたいな女の子だよ」


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