____苺の季節____
「杏奈がいると希望を持てる気がするよ……、色んな事、全部」


あたしの髪を何度も撫でる。


何て言って良いか分かんなくて、ただ、頷いていた。

鳴海は、あたしに色んな初めての感情を抱かせるね。

切なさや不安、優しさや愛しさ。


男の子の強さと暖かさの中にいる気持ち。


心から言えるよ。鳴海、あなたに会えて良かったと。

大きくて優しい手のひらに、あたしの白くて小さい手を重ねる。


「ずっと、一緒にいたいな」

そう言って笑う鳴海に、あたしは素直な笑顔で応えた。



うん、鳴海。

あたしも……、そう…思ってるよ?


ずっと一緒にいたいね。


【付き合う】ってハジメテで、幸せと不安が心の中で入り雑じるけど…、


鳴海、あなたとなら大丈夫。


そう、信じる事が出来る気がする。


鳴海が、あたしを想ってくれてるのが伝わる。その空気が嬉しい。

あたしの想いも、ちゃんと伝わってる?

くすぐったいし、照れくさいけど、彼氏と彼女って、何だか嬉しい響き。


そっと見上げると、鳴海が目を細めて言った。


「お前、マジで可愛すぎだって」


あたしを抱き寄せた腕が優しいよ。


「好きだ」


耳元で優しく放たれた一言は、まるで恋の魔法みたいだった。


この魔法がいつまでもとけませんように……。


広い胸に顔をぎゅっと埋めた。
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