優しく宝物
流れっぱなしだった音楽をまた聞こうとヘッドフォンに手を伸ばした
「啓ちゃん!」
たくさんの学生の中で美香の甲高い声が響いた。
『啓』という名前に伸ばした手が止まった。

流れる音楽が聞こえなくなる

「啓ちゃん私ね…」

なんだか心に引っかかるものもある。
前明美は啓が好きだった

なのになぜ美香に譲ったのだろう
変なプライドさえ捨てていれば
こんなことにはならなったのに・・・

今さらながらすごく後悔している。

高校に入ってすぐ
中学生から気になっていた同士の2人は付き合い始めた。
高校も同じだ
きっかけは明美のサバサバしたところからだった。


「俺の事好きなのかわかんねーよ」
「好きだよ」
「声に出さなきゃわかんねーじゃねぇか」
「好きだって」
「美香は俺のこと好きだってちゃんと声出して言ってくれるのに…」
「美香が?」
「そうだよ。」
「じゃぁ美香と付き合えばいいじゃない。」
「じゃぁ別れようぜ。友達に戻ろうな。」
「そうだね。」


なんで美香なのか
なんでそんなことを啓が言うのか
啓はそんな軽い気持ちで私と付き合って
そんな簡単に別れるものなのか

わからなくて
その時は混乱していた。

ただ覚えてるのは

泣いた記憶しかない。
< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop