山賊眼鏡餅。
キッチンとお風呂とハジメの部屋を回ったが、誰もいなかった。

残るは一つ。



ハジメのお母さんの部屋だ。



恐る恐る襖を開ける。




タンスと鏡台だけしか置いていないシンプルな部屋だ。

部屋の中には誰もいない。



うめき声は気のせいだったのかもしれない。


そう思って部屋を出ようとした時、物音が聞こえた。




コツコツと壁か何かを叩いたような音だ。



よく聞いてみると、それは、規則性を持っていた。

一定のリズムが繰り返されている。

タタッタタッタタッタター………



おらーは死んじまっただー……

帰ってきたヨッパライのリズムだ。



誰かが、帰ってきたヨッパライのリズムをこの部屋のどこかで叩いている。

考えられるのは押し入れだ。


私は、ゆっくりと、押し入れの襖を引いた。
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