山賊眼鏡餅。
頂上まで20分とは言え、きつい坂道を歩くのは結構辛い。


鳥居に着く頃には、すっかり息が上がってしまった。




山の頂上の鳥居で待っていたのは、黒装束の男だった。

明け方に助けてくれたあの男だ。



幻覚ではなかったのだ。


男は、私を見つけると、鳥居の奥に歩きだした。

私は慌てて後を追った。


神社の裏の茂みの中で、やっと男は立ち止まった。




「あの!携帯、ありがとうございます!」


散々歩いた後に、久々に声を出したので、自分でも、思いがけない大声になってしまった。



男は、人差し指を立てて唇に当てた。


静かに……
のジェスチャーだ。


それから、手招きをした。



男は、さらに茂みの奥に進んでいく。





私は男の後に従った。
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